かごの中の鳥は
――あそこは牢獄のような場所だった。
屋敷の周りは何kmあるのかわからないような森が塀を作り、外からの侵入を妨げている。それは同時に中の者も外に逃げられないことを意味していた。
今まで何人もの使用人が脱走を試みたが成功せず、屋敷に戻ってきた。
走っても走っても出口が見つからず、出口だと思って出たところは逃げ出したはずの屋敷だったという。
何かに阻まれているかのように外に出ることができない。
ここは『外』と隔離された場所。
『外』に出る方法は屋敷の玄関から続く1本の長い道、ただそれだけだった。
一葉は屋敷から出たことがなかった。厳密に言えば出させてもらえなかった。
ここに来てからただの1度も。中庭にさえ。
ご主人様の命により外に出ることを禁じられていた。
ご主人様はこの斎賀家の若き当主。
一葉はご主人様の1番のお気に入りだった。
だから常に自分のそばに置き、自分が外出などで傍を離れる場合、一葉に監視を付けていた。
何処にも行かないように。
ご主人様の命令は絶対だった。ここで生きていくにはご主人様に絶対服従する他ないのだ。
ご主人様に背くこと、即ち『死』を意味する。いや、死ぬよりもっと酷いことが待っていた。
ご主人様に背いた者は薬漬けにされ、地下室の牢に入れられ手足を鎖で繋がれ、日の目を見ることもなくご主人様の欲望のまま、人形のように一生を終えることになる。
だが、一葉はそれを知る由もない。
もちろんご主人様のお気に入りだから。それを教える者などいないのだ。
ご主人様以外の者と話すのを禁止されていたし、他の者も一葉と話すことを禁止されていた。
教えられていないだけマシなのだろうか。地下に落とされた使用人達と一葉への待遇はさして変わらない。ただ、日に当たることと薬漬けにされていないというだけ。
この屋敷にいる未成年の使用人全てがご主人様の玩具となっていた。玩具というよりペットと言った方が合っているのか。
この斎賀家の若き当主を人々は『狩人』と称した。
屋敷の周りは何kmあるのかわからないような森が塀を作り、外からの侵入を妨げている。それは同時に中の者も外に逃げられないことを意味していた。
今まで何人もの使用人が脱走を試みたが成功せず、屋敷に戻ってきた。
走っても走っても出口が見つからず、出口だと思って出たところは逃げ出したはずの屋敷だったという。
何かに阻まれているかのように外に出ることができない。
ここは『外』と隔離された場所。
『外』に出る方法は屋敷の玄関から続く1本の長い道、ただそれだけだった。
一葉は屋敷から出たことがなかった。厳密に言えば出させてもらえなかった。
ここに来てからただの1度も。中庭にさえ。
ご主人様の命により外に出ることを禁じられていた。
ご主人様はこの斎賀家の若き当主。
一葉はご主人様の1番のお気に入りだった。
だから常に自分のそばに置き、自分が外出などで傍を離れる場合、一葉に監視を付けていた。
何処にも行かないように。
ご主人様の命令は絶対だった。ここで生きていくにはご主人様に絶対服従する他ないのだ。
ご主人様に背くこと、即ち『死』を意味する。いや、死ぬよりもっと酷いことが待っていた。
ご主人様に背いた者は薬漬けにされ、地下室の牢に入れられ手足を鎖で繋がれ、日の目を見ることもなくご主人様の欲望のまま、人形のように一生を終えることになる。
だが、一葉はそれを知る由もない。
もちろんご主人様のお気に入りだから。それを教える者などいないのだ。
ご主人様以外の者と話すのを禁止されていたし、他の者も一葉と話すことを禁止されていた。
教えられていないだけマシなのだろうか。地下に落とされた使用人達と一葉への待遇はさして変わらない。ただ、日に当たることと薬漬けにされていないというだけ。
この屋敷にいる未成年の使用人全てがご主人様の玩具となっていた。玩具というよりペットと言った方が合っているのか。
この斎賀家の若き当主を人々は『狩人』と称した。