真実(仮)



溜まり場に着くと何人かの懐かしい人達の声が聞こえる。

この時間はまだほとんどの人が出ている時間帯なので少ないが、知らない人も含め、多数の顔見知りが扉の隙間から覗ける。


「そういえばさ、梓苑様のお付き決めしてるらしいな」

「ああ、聞いた聞いた。俺達の年代組から選ばれるんだろ」

「この中で言ったら俺じゃね?」

「は?んな訳ないだろ。お前なんかが選ばれる訳ないだろ」


何人かの男達の争いの声が聞こえる。

段々とヒートアップしていった争いに雷が落ちた。


「うっさいわね、あんた達!あんたらみたいな脳なしが選ばれる訳ないでしょ!!選ばれるとしたら二人くらいなものでしょ」


その場に居た同年代の者達の頭には一斉に二人の者の顔が浮かび上がった。


「だって片方は海外だろ。帰って来てないじゃん」

「いいや、帰って来るわ」

「うんうん。だってこの年代の中で一番信頼されてるのってあの子だけじゃない。私達なんか到底無理よ」

「そうね。サブで付けたら良いくらいのもんよ」

「だったらこいつも負けてないだろ」


うん。凄い入りにくい…

先程から一つのグループが熱く語ってる内容に''あいつ''だの''あの子''だの出てくる者とはもちろん、お分かりであろう。
鐐の事だ。


まだ部屋の中では話が続いている。

いつ入ろうか考えているとみんなが話している中一人静かに座っていた…いや、寝ていた''こいつ''と呼ばれた者が立ち上がりメンバーに向かって、


「ねえ、静かにしない?というよりそろそろ気付いてあげなよ」


と言いながら何処かへ移動しているようだ。ちょうど私には死角になっているので何処に行ったのかは見えていない。


「は?何にだよ」

「そんなんじゃ、選ばれる可能性低いと思うけど?」


あー、相変わらずのドS発言。毒吐くなあ。と呑気にしていると、目の前が突然開けた。


!?


私も含めそこに居たメンバー(ドアを開いたドS以外)が目を見開く。数秒経って、


「うっわ、ビックリしたじゃん。宗侍」

「嘘付け。どうせ俺が開けるの気付いてただろ、鐐」


と、他のメンバーに聞こえない特殊な会話法で言ってきた。側から見ると私が無視されているように見える。

このドS。名前を''皐月 宗侍''(サツキ ソウジ)という。


小さい頃、梓苑がサツキが名前だと思ってたらしく、ずっとさっちゃんと呼んでいたのを思い出し、笑みをこぼすと何を思っていたのか判ったらしく軽く睨まれた。



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