真実(仮)


「さて、早速なんだけど…」


黎苑様のその一言で場の空気が入れ替わる。

その続きを言われる前に私から切り出した。私に言うのは黎苑様もキツいであろうと思っての事だった。


「父と母のことですね?」


実際、日本に帰って来た理由は父と母の事でだが、詳しいことは電話だったので聞いていない。


「ああ、そうだ。耀(ヨウ)と南(ミナミ)の事だ。聞いていると思うが、二人が事故で亡くなった。即死だったそうだ」

「はい、そこまではお聞きしました」

「二人が亡くなったことはこちらとしても悲しい事だ」


黎苑様ご夫妻と父達は、高校時代からの付き合いがあったそうだ。これは、父が生きていた頃に聞いたことであった。


「二人を救えなかったことが悔しい」

「父も母もみなさんに大切にして頂いていたことが何よりだったと思います。死ぬまでお仕えする事が出来て、友人として扱って頂いて嬉しかったのではないかと」

「ああ。二人はそういう奴らだ。そんなこと言いそうだな、悔やんでなんかいたら化けて出てきそうだ」


少し笑いつつ、父達の事を思い出し、感傷に浸っていると


「二人の葬儀などはこちらで引き受けよう。何か困った事があったら言いなさい」

「そうよ。鐐は一人じゃないんだから」


と声がした方を向くと梓苑様の母である、''星咲 梓''(ホシサキ アズサ)様が入り口の前に立っていた。

梓苑様はどちらかというと母親似だ。

梓様に向かって礼をとり、軽く言葉を交わした。


その後、事故の事などを詳しく聞き、久々に会ったことから色々な世間話をし、退散した。

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