真実(仮)


玄関へ行き、ドアを開けると懐かしい顔が見えた。


「ん〜!文さん。お久しぶりです」

「鐐ちゃん、おかえりなさい。どうだった?向こうは」

「行って良かったと思ってます。と言ってもまた戻る予定ですけど(笑)」

「あら、そうなの?色々お話ししたかったのに〜」


文さんは星咲に仕えている人で、河野文(コウノ フミ)さん、女の人達の中では一番の最年長者だ。


「1.2週間は居る予定ですし、8月からは一応こちらに戻るつもりです」

「そうね、梓苑様にもそろそろ誰かがつかなくてはいけないしね」


流石、よく星咲の事を分かってる、と思った。


「あ!それなら鐐ちゃんにちょっとお願いがあるんだけども…」

「ん?はい、何ですか?」

「琴巴がね、''私、海外行ってみたい''って言うのよ。私や睦美さんが最近は物騒だから一人では駄目よ、って反対してるんだけども''なら、鐐姉に頼んでみるもん''って言って聞かないのよ。他の人達は今居ないし…」

「琴ちゃんがですか?」


琴巴(コトハ)は、文さんのお孫さんで現在中学1年生。睦美(ムツミ)さんは琴ちゃんのお母さんで文さんの義娘さんにあたる人である。


「ええ、もし、鐐ちゃんが良かったらだけど、今度行く時に連れて行ってあげてくれないかしら?鐐ちゃんが一緒なら安心だし、2.3週間なら良いと思ったんだけど…」


向こうの事も色々とあったので少し迷ったが、


「文さんと睦美さんが良いなら私は大丈夫ですよ。やらなくてはならない事があるのであまり構ってあげられませんが」

「本当!?ありがとうね。そこは別に構わないと思うわ。いきなりこんな事頼んでごめんなさいね」

「いえ、全然気にしないで下さい。琴ちゃんがどうしたいか分からないですが、将来ここで働くにしろ、どんな仕事をするにしても早い内に世界を見て置くことは良い事だと思うので、経験させてあげられるならさせてあげた方が為になると思います」

「そうよね。助かるわ。早速今日2人には話してみるわ。まだ落ち着いてない時にごめんなさいね」


その後、幾つか言葉を交わし、文さんは帰って行った。


もちろん、アイスが溶けていたのは言うまでもない。


一息つき終え、家中を周り再び星咲邸内にあるみんなが集まる溜まり場へと行く事にした。





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