星に願いを


「久藤先輩、付き合って下さい…っ!」



転校して来て既に10日目。明日から夏休みやという事で、今日はやたら呼び出されてこの台詞を吐かれる。



「俺、好きな奴おんねん」




そして何度目かのこの返事を俺は吐く。



“好きな奴”、それは昔から一人だけ。

大阪に来てアイツの顔みたときはホンマ何も変わってへんで嬉しかった。

俺の事忘れとる事も、思い出してへんことも知っとったから傷付く事なんてなかった。


“あの日”の事を謝りたかった。せやけど覚えてへん鈴子に言ったところでしゃあない。

思い出した時、すぐに謝れる場所に居たい。

やけど、アイツを目の前にしたらどんな態度したらええかわからへんくって、すぐに嫌われた。


でもこないだ初めて、名前で呼ばれた。

昔は俺の事“りーくん”呼んでたけど、今は亮ってゆうてる。

ホンマに忘れとるんやな、て一瞬寂しなったけど、今は俺に笑ってくれるようにまでなってん。


ま、俺は相変わらず虐めとるんやけど。



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