星に願いを


「ただいまー!」


ガラガラっと玄関を勢い良く開け、靴は投げ脱いで、さぁ冷蔵庫に直行。

暑い、喉がカラカラ。


「もう夏じゃん」


なんて呟いて冷えた麦茶を一気のみ…?




「え…だ、れ?」




居間をよく見ると、おとん、お母さん、あと一人見知らぬ男が。

遠目でもわかる。濡れたような綺麗な黒髪に、しっかりとした男らしい顔立ち。白のワイシャツと黒の綿パン。シンプルなその格好が異様に大人っぽくて。見た感じは大学生でうちの汚い畳にあんなに綺麗な正座をする人を初めてみた。見知らぬイケメンに、ごくり。息を飲む。






「はじめまして、工藤亮助です。」







くどうりょうすけ。その男はニコっと笑い(え、かわいいっ!)礼儀正しく頭を下げる。クールな外見からは分からなかったが、笑うと目尻が下がって垂れ目がちになる。失礼ながらにも笑顔がすっごく可愛かった。

なんてこった。おとんにこんなイケメンの知り合いがいたとは。侮れない。もしや親族か?とも思ったが、うちの親族はけっしてイケメンDNAでは、ない。

これは、あれだ。
すぐさま紹介してもらうべきだ。



「えっえっ榎本鈴子です。はっはじめまして!」




しかし、その後すぐおとんが申し訳なさそうに呟いた。







「…息子さん、だった」









…………は?


もしかして、もしかしなくても、今日から家族の一員になるはずだった…






「…亮子ちゃん」





馬鹿親父、ほんとうに侮れない。



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