怪奇体験・短編集
始まり
最初にお断り申し上げておきますが、私は霊能力者では有りません。
実際に、霊を見たのか、どうなのかわかりません。
でも、今から書くことは、全て真実です。


始まりは、8歳くらいだったと思います。
登校中に何かにつまずいた。
と、言うより足を掴まれた・・。
そんな感じで、前倒しになって倒れてしまいました。
どの位時間が経ったのか、気が付くと保健室のベッドの上でした。
思いっきり倒れたのに無傷でした。
その時、遠くでサイレンが聞こえたのですが、何だか凄く嫌な感じでした。
「私の家だ・・。」
なんで、そう思ったのか分かりません。
ただ、何となく・・・。
突然ドアが開いて、先生から「家が火事になったそうよ!早く帰る支度をして!」と、言われました。
家は全焼しましたが、幸い怪我人も飛び火も無く、被害は自分の所だけでした。


12歳の頃、怖い夢を見ました。
夢の中で、私は男性でした。
夜中の様でした。
旅館の部屋みたいです。
急におトイレに行きたくなったのですが、部屋にトイレは有りませんでした。
部屋を出ておトイレに行く途中で、浴場からお湯をかぶる音が聞こえてきます。
「ビシャッ!ビシャッ!」
振り返ると、浴場に明かりはついていません。
でも音ははっきり聞こえます。
「ビシャッ!ビシャッ!」
そっと覗くと髪の長い女性が、真っ暗な中で頭からお湯をかぶっている姿だけが見えているのです。
体中から汗が噴き出して震えて来ました。
そっと扉を閉めて、部屋に急いで戻ろうとするのですが、夢の中って早く動けないんですよね。
やっと、部屋について、フトンに潜り込んだのですが、廊下をギシ・・ギシ・・歩いてくる音が聞こえる。
「来るな!来るな!」
私は声を出さずに叫んでいました。
音は、部屋の前で、ピッタリ止まりました。
ガチャ・・キィ・・・。
部屋が開いた、その瞬間に目が覚めました。
怖かった~~。夢で良かった。
怖い夢って人に話すと正夢になるんだっけ?話さないと正夢になるんだっけ?
どっちか分からなかったから、とにかくお友達に話す事を選んだ私。
でも学校では話すチャンスが無く、塾の帰りにやっと話すチャンスが来たのです。
「ちょっと怖い夢の話なんだけどきいてくれない?」
私が言うと、友達がすかさず、
「私も怖い話があるんよ。昨日、聞いた話なんだけどすっごく怖くて・・・。」
と、私が話すよりも先に話してくれた内容は、交通事故に会った女性が旅館の浴場で血だらけの髪を洗っていた・・・という話でした。
一気に話した後、お友達が、「それで、千絵ちゃんの話は何?」といわれて、私は夢の話をしました。
生暖かい風がフワッと吹いて、柳が暗い道にサワサワ揺れた瞬間、私たちは「さよなら」も言わず、一気に家に走って帰りました。

やはり12歳くらいの頃の事です。
ある時祖母がテレビでプロレスを見ていました。
私も祖母の隣に座って、テレビを見た瞬間、「この人、昔、野球でピッチャーしてたよ。」とジャイアント馬場を指さしました。
祖母は呆れたように、「この人はプロレスラーや。野球なんかやってたなんて聞いたことも無いわ。誰かと間違えてるよ。」と、取り合ってくれません。
「そうかなぁ。野球やってたの確かにこの人なんだけど・・・。」
もともと私はスポーツ観戦も、テレビで格闘競技みたいなのを見るのもキライだったので、確信は有りませんでした。
でも記憶には、はっきり映像が有るのです。
別に大した事でもないか、と、その内忘れてしまいました。
暫く経ってから、また、祖母とテレビを見ていた時の事です。
ジャイアント馬場の事がテレビに出ていて、昔、野球選手でピッチャーだったことを話していたのです。
祖母がびっくりして私の顔を見ました。
一番驚いたのは私です。
だって野球選手だったのは、私が生まれるよりも何年も前の事だったから。

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