怪奇体験・短編集
自転車
これも、私が中学生の頃の話です。

土曜日のお昼頃、お友達の真衣ちゃんが遊びに来てくれました。
散々お喋りをしてて、気が付くと薄暗くなっていました。
真衣ちゃんの家までは1本道で徒歩20分くらいの距離なのですが、途中までは街灯も無く、人通りも無く、女の子一人で帰るには怖すぎる道でした。
私が送って行っても、今度は私が帰り道怖いし・・・。
「明日お休みだし、泊まれば?」
私が言うと、真衣ちゃんは困った顔をして、
「今日はお母さんが居ないから、お姉ちゃんに聞いてみる」
家に電話をしたら、お姉さんは一人で家に居るのは嫌だから私にこっちに来てもらえば?と、言ってるらしい。
結局、真衣ちゃんの所に泊まる事になって、一緒に私の家を出ました。
とっても広い道の両側は田んぼだけ。
かなり向こうの街灯が見えるところからはキレイなアスファルトの道になっていて、そのまだ先が真衣ちゃんの家。
右手の田んぼの真ん中に、小さな墓地が有りました。
「何であんな所にお墓が有るんだろうね」「あのお墓には、どこからいくんだろう?」とか、話ながら歩いていました。
その時、後ろから、砂利道を走る自転車の音が聞こえてきました。
【キィ~、ガシャンガシャン、キィ~、ガシャンガシャン】
ペダルを踏む音に混じって、ちょっと錆びついたような軋む音。
二人で後ろを振り向くと、ライトを点けた自転車が砂利道にハンドルを取られて、ちょっとフラフラしながら走ってきたのです。
「良かったね!あの自転車が来たら一緒に街灯のとこまで走って行こう!」
少し歩く速度を落として、自転車が近づいて来るのを待ちました。
「・・・遅いね。」と、真衣ちゃん。
「そういえば自転車の音聞えなくなったよ?」と、私。
2人同時に振り向くと、真っ暗な道しか見えません。
「自転車、どこに行ったの?」
「他に、道が有ったっけ?」
「お墓に行ったのかな?」
「自転車のライト見えないよ?」
顔を見合わせて思いっきり叫んで、街灯の下まで走りました。
「ハア、ハア・・・さっきのライトは自転車じゃなかったの?」
息を切らしながら、真衣ちゃんが言いました。
ガシャン!!
いきなり鳴った音に体がビクンとなりました。
自転車が私たちの真横を通り過ぎて行ったのです。
その時の姿は今でも目に焼き付いています。
真夏なのに、鳥打帽みたいな帽子を被り、分厚いジャンバーを着てハイネックの衿で鼻と口を覆っていました。
帽子の下から、私たちを睨むような目だけが見えました。

真衣ちゃんも私も少しの間、動けませんでした。

あの自転車は何処に消え、再び、何処から現れたんだろう・・・。

< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop