怪奇体験・短編集
団体
私が短大2年の時に体験した話です。

1年の時に住んでいた下宿から、今度は、ちょっとしゃれたアパートに引っ越しました。
仲良しの洋子ちゃんも一緒です。
4畳半のワンルームですが下宿よりずっと快適でした。
鉄の階段をカンカンカンッと登って行き、1番奥が洋子ちゃん、その手前が私の家でした。

試験中だったのでバイトも休み、家でレポートやら試験勉強やら、もう疲れて来てちょっと休憩。
狭い部屋なのでコタツを壁にくっ付けて、壁に向いてゴロンと横になりました。

少しウトウトした時に、階段を団体で上がってくる音が・・・。
その靴音は、何か喋りながらどんどん近づいてきます。
何処に行くんだろう?
そう思った時に、玄関が、ガチャッと開いたのです!
「え?鍵かけてた筈なのに・・・。」
不思議だけど、怖いとか恐ろしいとかそんな感じは無く、ただイキナリの団体訪問に、少しムッとしてました。
更に土足で人の部屋に上がって来てる様子。
「失礼な人たちやなぁ!」
そう思って体を動かそうとしたら・・・動かない!!
金縛りだ!
話し声は相変らず聞こえる。
それも私の真後ろで・・・。
だんだん怖くなってきました。

「やめて!やめて!」必死になって叫ぼうとするけど声が出ない!
耳をふさぎたくても、手も動かない。
話声は甲高い笑い声になって大きくなっていく・・。
「洋子ちゃん助けて!!」
心の中で叫び続けました。
耳が痛くなるほど、声は近く大きくなってピタッと止みました。

ホッとして目を開けた瞬間、スッと私の目の前を茶色いズボンが通りました。
「・・・!」
もう恐怖しかありませんでした。

飛び起きて、玄関まで行き確かに掛かっている鍵を開け、隣の洋子ちゃんの家へ駆けこみました。
状況を説明したくても何も言葉に出来ない私に、洋子ちゃんがさらに追い打ちを掛けました。

「あんたの部屋うるさかったなぁ。誰が来てたん?」
私は怖くて怖くて泣き出しました。
結局その時は、洋子ちゃんには何も言いませんでした。

卒業して何年も経ってから洋子ちゃんと会う機会が有り、この話をしました。
洋子ちゃんは、当時の事を良く覚えていました。
「あのとき私に誰が来てたか聞いたよね?・・実はね誰も居なかった。私一人だったんよ。でも私も声が聞こえたし、ズボンだけだったけど確かに見た。それで怖くなって洋子ちゃんの部屋に逃げ込んだんよ。」
「もう言わんといて!!」
洋子ちゃんが耳をふさいで、この話は終わりました。




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