刀華
 彦四郎は剣先を地に向けたまま、鬼一郎を眺めていた。
 その目が、眩しそうに細められている。
 やはり、日を背にした鬼一郎の姿は見にくいのだ。

「ちえぇぇいっ!!」

 獣のような咆哮と共に、鬼一郎が斬り込んできた。
 そのとき。

「!!」

 鋭い光が、鬼一郎の目を射ぬいた。
 あまりの眩しさに、鬼一郎の動きが止まる。

 その瞬間。
 どすっという、鈍い音がした。

「……?」

 何が起こったのかわからないまま、鬼一郎は目を見開いた。
 身体が重い。

 少し離れたところに、彦四郎が立っている。
 ちょっと前屈みになり、自分を眺めている。
 その顔には、やはり薄ら笑いが浮かんでいて---

 ふと、視界に何か邪魔なものがあるのに気付いた。
 半分の視界なので、気付かなかったようだ。

 それを認めた瞬間、鬼一郎は口を大きく開けた。
 叫び声を上げたつもりだったが、せり上がってきたのは血泡であった。
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