刀華
「とはいえ、お前とわしじゃ、力の差がありすぎて勝負にならんのだがな」

 嘲るように、鬼一郎が言う。

 確かに道場内では、鬼一郎に勝る者はない。
 彦四郎とて例外ではないのだ。
 それは二人を見ただけでもわかることであった。

「お主、お師匠の鷹をどうした?」

 道場の上座に坐したまま、鬼一郎が彦四郎に問うた。
 あれは師匠が二人の腕を試したのだとわかっている。

「捕まえて、止まり木に返した」

 び、と彦四郎の振り下ろした木刀が音を立てた。

「優しいの。そこがお主の悪いところじゃ。己にかかってくるものは何であれ、即座に斬り払う。それが剣客というものよ」

 高らかに笑いながらそう言い、鬼一郎は己が見せた腕の冴えを、滔々と語るのだった。

---馬鹿め。誰が優しいものか。俺は飛んできたのがお師様の鷹だとわかったから、斬らずに捕まえただけだ---

 胸の内で鬼一郎を蔑みながら、彦四郎は木刀を振り続けた。
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