刀華
 その夜、師は再び二人を呼んだ。
 立ち合いを明日にすることと、場所と時刻を告げ、勝ったほうに佩刀を授ける、と言った。

「ということは、勝ったほうが、この流派の総帥二代目、ということで、よろしゅうございますな」

 念を押す鬼一郎に、師匠は頷いた。
 にやりと、鬼一郎の口元に笑みが浮かぶ。
 そして、ちらりと横に控える彦四郎を見ると、一礼して下がっていった。

「お師様」

 鬼一郎が去った後で、彦四郎が口を開いた。

「何故、わざわざ立ち合いなど行うのです」

 彦四郎の問いに、師匠は黙したまま、彼を見た。
 しばし、そのまま時が過ぎる。

「お主の腕を、奴は知らぬ」

 ややあってから、静かに師匠が答えた。

「鬼一郎を、犠牲になさるか?」

「……やむを得まい」

 短いやり取りだけで、彦四郎も一礼すると、座を立った。
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