刀華
「鬼一郎。鷹を捕まえただけの俺を、優しいと言ったな」

 抜いた刀を無造作に肩に担いで、彦四郎が言う。

「一刀の下に斬り捨てたお前のほうが、俺よりよっぽど優しいぜ」

「な、何をっ」

 再び鬼一郎は正眼に構え、一気に間合いを詰めた。
 担いだ刀を回す間を与えず、袈裟に斬り下ろす。

 が、これも彦四郎は後ろに飛んで躱した。
 同時に、担いでいた刀を、手首を捻って回す。
 長い刀は、手首の僅かな返しで、勢いをつけて回転した。

「うおっ!」

 太刀を振るい、伸びていた上体を、鬼一郎は慌てて戻す。
 だがその左目を、回転してきた彦四郎の刀が襲った。

「ぎゃっ!!」

 先程よりも派手に、血が飛んだ。
 鬼一郎の左目を裂いた刀をもう一度回して勢いを殺し、彦四郎は切っ先を地面に向けて動きを止めた。

「教えてやろう。あの鷹、お師様のものでなければ、握り潰していた」

 残った片目を見開く鬼一郎の前で、彦四郎はにやりと笑った。
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