刀華
 小鳥と違い、大きな鷹を握り潰すことは、そう簡単ではないだろう。
 じわじわと締め上げ、少しずつ鷹の身体の骨が折れて行く。
 鷹にとっては地獄であろう。

 それなら一刀の下、一瞬で命を絶たれたほうが、よっぽど楽だ。

 どこか呆然と彦四郎を見ていた鬼一郎は、は、と気付いた。
 自分も、今まさにその状態ではないか。

「き、貴様は……。わざと苦しみを長引かせるのか!」

 左目から流れる血で顔半分を染めながら、鬼一郎が喚く。
 その言葉に、ちょっと彦四郎は目を見張った。

「ここで負けを認めるのか?」

 薄ら笑いを浮かべたままの彦四郎に、鬼一郎は、かっとなった。

「ほざけ! 隻眼になろうとも、貴様などに負けるわしではないわ!」

 顔を押さえていた手を離し、三度(みたび)構えを取る。

 今までの比ではない気を発し、じりじりと、足先で地面を擦って間合いを詰める。
 間合いが狭まるにつれて、鬼一郎の剣先が細かく上下に揺れた。

 身体も小刻みに揺れる。
 いかなる斬撃にも、瞬時に対応するためだ。
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