小さなキミと





布無しコタツ机だけでは少し狭い、ということで。

葉山くんがどこからか木のローテーブルを持って来て、コタツにくっつけて合体させた。


じっとしているだけで額に汗がにじむ様な暑さだというのに、葉山家は午後からしかクーラーを付けてはいけないらしい。


なので、部屋には頼りない扇風機が1台。

暑いけれども、人の家だからまぁ仕方がない。


勉強を開始して、およそ3時間。

時刻は、そろそろお昼時だ。


「────だからぁ、なんでじゃなくて、そういうモンだって覚えるしかないの」


「ええぇーーーー。そんなのあたし、納得いかないんですけどぉ」


そう口をとがらせて抗議する結の隣で、盛大にため息を吐く葉山くん。



「あ、そっか。オレ、ここで二乗するのを忘れてたんだ」


「うん。だから世良くん、解き方は合ってるんだよ」


横並びに座った日向と世良くんは、互いに褒めて伸ばすのスタンスで教え合っていて、なんとも微笑ましい。



そしてあたしは、というと。


「っていうかそんなに後悔するくらいなら、最初っからやんなきゃよかったんだよ。
大体、この性悪女のどこが良いんだか。マジ理解不能なんだけど」


現代文の小説の、どうも好きになれない主人公に対する、不平不満が止まらなかった。


でもこれは、決して独り言ではない。


あたしの正面に座って頬杖をついている、眠そうな顔をした男子に向けての言葉だ。

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