小さなキミと
「だよなぁ、オレも思ったー。
この“わたし”ってヤツ、読んでてすっげーイラつく……」


欠伸まじりに、あたしの意見に同意を示してくれたのは、
今朝、あたしたちが来た途端に啖呵を切って帰って行ったはずの、服部だった。


そんな服部につられて、こっちまで欠伸が出てしまう。

なんだかちょっぴり頭が痛いような気もするし。


あたしの集中力は、もう限界に近付いていた。



服部がなぜここに居るのか。

その理由は、というと。


それは笑っちゃうくらい、間抜けなものだった。


「家の鍵忘れた。うちの家族帰ってくるまで入れねーから、それまで」


ものの5分もしないうちに部屋に舞い戻って来た服部が、開口早々言ったのがそれだ。


大きなバッグを抱え、バツの悪そうな顔でベッドに座り込む服部を目の前にして、これでもかっていうぐらいの嬉しさがこみ上げた。


同時に笑いもこみ上げて、あたしはお腹を抱えて大笑いしてしまい……


結果、服部に思い切り頭を叩かれることとなった。







「そろそろ休憩しない? 昼飯食おーぜ」


葉山くんのその言葉に、迷うことなく賛成したあたしたち。


とりあえずノート類をカバンに片づけて、それぞれが持ち寄ったパンやお菓子を、机いっぱいに広げる。


お腹が空きすぎて死にそうになっていたあたしは、持参したパンをあっという間に平らげた。


日向と世良くんが、来る途中にコンビニで色々買ってきてくれたおかげで、様々な種類のお菓子まで食べることが出来て幸せだった。


眠気も頭痛も、不思議とこのときだけは消えていた。

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