小さなキミと
市販の薬があれば、すぐに収まるんだけどなぁ……


運悪く、今日頭痛薬は持ってきていない。


持ってこればよかったと、痛みに耐えながら痛烈に後悔した。


「市販でよかったら、頭痛薬持ってこようか?」


気が利く葉山くんの救いの提案に、あたしはすぐさま飛びついた。


「マジっ? むしろ市販がいいです、ありがとう、お願いしますっ」


席を立った葉山くんは、5分程して戻って来た。

錠剤入りの銀色のシートと、水の入ったコップをありがたく受け取った。


「葉山くん、マジでありがとう」


「いえいえ」


錠剤を飲み込んでお礼を言ったあたしに、葉山くんは爽やかな笑顔を見せた。


これで頭痛は収まるはずと、ホッと一安心。

あたしは薬が効きやすい体質なので、いつもなら効果はすぐに表れる。


葉山くんには、感謝してもしきれない。

そしてキッカケをくれた服部にも、ついでに感謝をしておこう。


葉山くんが席を立っている間、服部が、あたしのことをジロジロと珍しいものでも見るような目で観察してきたことは、この際水に流してあげよう。


心臓が脈打つたびに頭が割れそうなこの状況では、正直勉強どころではなかったから、本当に助かった。


痛みが和らぐまで休憩しよーっと。


カリカリとシャーペンを走らせ、真剣な面持ちで目線をノートに縫い付け始めた服部を、今度はこっちが観察してやった。


結や日向のように、好きな人と横並びで座るのも良いけれど、こうして向かい合わせになるっていうのもアリだと思う。


男子の伏目って、結構好きだ。








それから30分もしないうちに、確かに薬の効果は表れた。


表れたんだけど……

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