小さなキミと
剛の髪の隙間から、なんだか間の抜けた寝顔が覗いていた。


いつもオレにガキガキ言うくせに。

お前だって、ガキみたいな顔して寝てんじゃん。


思わずフッと笑いが漏れてしまい、慌てて咳でごまかした。


ダメだ、余計なことは考えないようにしないと途中で落っことす危険がある。


オレは平常心を心がけつつ、自分の肩に剛の腕をまわす。


そして一瞬ためらった。


腕はともかく、身体を触るのには勇気がいる。


いくら剛といえども相手は女だ。


引きずるよりも抱きかかえた方が効率がいいのは分かっていて、そのつもりでオレは腕を肩に回した。


だけどやっぱり恐れ多いというか、何というか。


剛を抱きかかえるオレを、周りがどんな目で見るのだろう、というくだらない懸念も浮かんでしまった。


変なこと考えるな、変なこと考えるな、変なこと考えるな。


こんな体勢でジッとしているほうがおかしい。


よし、もうこんなのサッサと終わらせよう。


意を決し、オレは剛のヒザの後ろに手を突っ込んで、そいつの身体を自分の方へと引き寄せた。


あとは、このまま立ち上がるだけだけど……


身長差があるといっても所詮剛は女だし、見た目からしてもそこまで重くないだろうと高をくくったのは失敗だった。

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