小さなキミと
頭が状況を認識する前に────


その感触はすぐに消えた。


カクンと倒れた剛の頭が、オレの首元に収まったのが分かる。


剛はどうやら、勝手に意識を手放したらしい。



……ハァ!?

なに、なに、なに、なに今の。

なに考えてんのコイツ。



我に返ったオレはまずパニックに陥り、そして身体中の感覚は何だかおかしくなってしまった。


頭はボーっとして目が回るし、クーラーが相当効いているはずなのに暑くて仕方がないし。


視界がぼやけ、耳鳴りだろうか、なぜか壊れたファンヒーターの発するような音が聞こえるし。


自分が立っているのか座っているのか、それさえも曖昧で。


まるで夢の中にいるみたいだった。


全てがフワフワしていて、非現実的で、まるでリアリティがない。


だってどう考えてみたって、この状況は変だから。


相手はオレのことを小学生だと思っているようなヤツだ。

そいつが今、オレに何した?


だけどその感触だけはやけにリアルで、それが夢ではないことを教えていた。


いつもとは逆転の目線、上から覗ける剛の寝顔は、腹立たしいほどに無邪気だった。


どういうつもりなんだ、コイツは一体。



「ご……、剛っ」


揺すってみるけど、反応はない。


なんなんだよもう、マジで腹立つんだけど。

人の心引っ掻き回して勝手に寝てんじゃねーよ!



オレはベッドに向かって、このバカを放り投げた。

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