小さなキミと
そのとき、あたしは今のこの状況にようやく違和感を覚えた。


暗闇に目が慣れてきて、部屋の様子をうっすらと窺(うかが)い知ることができるようになり。


馴染みのない机やテーブルに、いつもと違うベッドやカーテンの柄。

思い返せば、ベッドのマットがいつもより身体にフィットしすぎていた気がする。


そもそも、クーラーが作動している時点でおかしい。


あたしの部屋に、そんな高価な快適グッズが備わっていた覚えはない。


ここ……あたしの部屋じゃない。


っていうか、あたしんちじゃない。


そう気づいた瞬間、全身の血の気が引いていくのが分かった。


ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。


ここは……葉山くんの家だ。


そう。

そうだ、うん、今日は葉山くんちでお泊り勉強会だったじゃん。


今日は朝からずっと勉強をしていて、途中で頭がめちゃくちゃ痛くなって、葉山くんに薬をもらって。


そうしたら頭痛は消えたけど、今度はすっごい眠くなっちゃって。


で、今に至る……?


えええぇー!


あたし、あれからずっと寝ちゃってたってこと?


っていうかどうして誰もいないの?


いやその前に、今何時?



あたしはゆっくりと立ち上がって、さっきの二の舞にならないように慎重に部屋を抜け出した。


どうやら2階はあたしの他に人がいないようで、廊下まで真っ暗だった。


だけど下の階は明るくて、大勢の人の気配を感じる。


ということは、まだ夜中ではないらしい。


あたしは身体の気だるさを抱えたまま、その明かりを頼りに階段を下りて行った。

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