小さなキミと
その子たちに手を引かれ、あたしは中腰になりながらリビングに入る。


チラッと視界に入った、キッチンカウンターに置かれた電子時計は、夜の7時半を示していた。


そして、ダイニングの奥の、テレビとソファが置かれたリビング空間には、見知った顔たちが集結していた。


「涼香ぁ、やっと起きたねー」


真っ先に声をかけて来たのは、結。


なんだか久しぶりに会ったような感覚だった。


「みんな、このおねーさん連れてきてくれてありがとね」


結がそう言うと、なにがそんなに楽しいのか、子どもたちはケラケラと笑いながらダイニングの方へ駆けて行った。


ダイニングのテーブルには、子どもだけじゃなく大人も何人かいるようだった。


「あの子たちって、誰?」


あたしの問いに答えたのは、ソファでくつろぐ葉山くんだ。


「オレの双子の弟と妹、あとの2人はイトコ。今日たまたま遊びに来ててさ」


ホイホイっと指をさして、そう教えてくれた。


なるほど、やけに人が多いと思った。


一応近くを通るときにペコッと会釈をしておいてよかった。


「そうなんだ。ところで、これあたしも食べていい?」


ソファの前に置かれた木製の座卓には、なにやら美味しそうな料理が並んでいる。


ポテトサラダ、焼きそば、チキンライスなど、単品が大皿に乗っていてとても豪華だ。


結と葉山くんはソファに腰掛けて、日向と世良くんは座卓のそばに座って、それぞれ夕食をとっていた。


「どーぞ。母さんが張りきっちゃってさ」


そう言う葉山くんに受け皿と割り箸をもらったあたしは、何を食べようかとウキウキで座卓に腰を下ろし、あることに気づく。


服部が見当たらないのだ。

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