小さなキミと
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「こっ、高校1年生!?」
あたしは思わず、手にしていたスマホを落っことしそうになった。
たった今、彼がサラリと衝撃的な事実を告(つ)げたからだ。
「う、うそぉ」
「嘘じゃねーよ。オレはすぐに分かったけどね、アンタも若南(わかなん)の1年だって」
うろたえるあたしに対し、ハァハァと息を切らせた彼の背中が言った。
「な、何で学年まで……」
「エンブレムの刺繍(ししゅう)が赤色だったからね」
現在、あたしと彼を乗せた赤い自転車は、川沿いの“桜通り”と呼ばれる道を走行中だ。
向かって右手、川堤(かわづつみ)の土手の斜面には、満開の桜の大木が立ち並び、見事な桜並木を作っていた。
ここは人気のお花見スポットで、今日は平日の早朝だというのにもかかわらず、見物人の歩行者が多い。
ただ、あたしにとっては、左手のカフェやアイスクリーム屋さんの方が数倍魅力的だ。
乗り心地の悪い荷台にまたがって、あたしは自称高1の彼の後頭部を凝視する。
春風に揺れるその柔らかそうな黒い髪が、何だか急に大人びて見えた。
わき目も振らずに、肩を上下させて必死でペダルをこぐ彼。
汗が彼の襟足から首の後ろに伝って、日差しでキラキラ光っていた。
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「こっ、高校1年生!?」
あたしは思わず、手にしていたスマホを落っことしそうになった。
たった今、彼がサラリと衝撃的な事実を告(つ)げたからだ。
「う、うそぉ」
「嘘じゃねーよ。オレはすぐに分かったけどね、アンタも若南(わかなん)の1年だって」
うろたえるあたしに対し、ハァハァと息を切らせた彼の背中が言った。
「な、何で学年まで……」
「エンブレムの刺繍(ししゅう)が赤色だったからね」
現在、あたしと彼を乗せた赤い自転車は、川沿いの“桜通り”と呼ばれる道を走行中だ。
向かって右手、川堤(かわづつみ)の土手の斜面には、満開の桜の大木が立ち並び、見事な桜並木を作っていた。
ここは人気のお花見スポットで、今日は平日の早朝だというのにもかかわらず、見物人の歩行者が多い。
ただ、あたしにとっては、左手のカフェやアイスクリーム屋さんの方が数倍魅力的だ。
乗り心地の悪い荷台にまたがって、あたしは自称高1の彼の後頭部を凝視する。
春風に揺れるその柔らかそうな黒い髪が、何だか急に大人びて見えた。
わき目も振らずに、肩を上下させて必死でペダルをこぐ彼。
汗が彼の襟足から首の後ろに伝って、日差しでキラキラ光っていた。