小さなキミと
「服部。今、寝起き?」


「……いや」


「今から寝ようとしてたとこ?」


「……まぁ」


「まぁってなによ」


「……んー」


服部の返事は、どれもあたしの質問の答えになっていない。


もうちょっと、なんか、こう……会話を広げてくれてもいいのに。


っていうか、もしかして眠いのかな?


人の気配を感じてちょっと様子を確認しに来ただけ、とか?


だったら早く部屋に戻りたいのかもしれない。


「眠いなら部屋戻ったらどーなの? メガネくん」


いつもの調子で服部をからかうように、それを促(うなが)してみる。


すると服部は一瞬目を細めてあたしを睨み、それから顔を伏せて深くため息を吐いた。


それには少々カチンときた。


「ちょっと、何? それムカつくんですけどー。人がせっかく気ぃ遣って」


「つーかお前さぁ、なんでそんなフツーなんだよ」


あたしの言葉を遮った服部は、心底呆れたような、それでいてどこか責めるような口調でそう言った。


「……は?」


何のことだか、サッパリ分からない。


なんでそんなフツーなんだよ。


なぜそんなに普通なんですか。


頭の中で繰り返してみても、言い換えてみてもやっぱり分からない。


もっと反省しろ、ということかしら。


それとももっと狼狽(うろた)えろ、ということかしら。


でも、服部に怒られるような覚えはないんだけど……


「アッ!」


今が深夜1時半だということも忘れて大きな声を出してしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。


そういえばあたし、寝ぼけて服部に何かやらかしちゃったんだった……

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