小さなキミと
「じゃなくて、オレはお前に訊いたんだけど」


「あ……ハイ。っていうか、そ、そんなん訊いてどーすんの?」


そう言った途端、服部がギロッと睨みを効かせた。


「いいから答えろっ」


えぇー、何で怒られなきゃなんないの?


少し納得がいかなかったものの、あたしは意を決して正直に言うことにした。


服部がどんな反応をするのか、試したい気持ちもある。


「彼氏はいませんが。でも……まぁ、好きな人はいる、かな」


ドクン、ドクンと、あたしの心臓が何かを期待するように音を立てた。


ところが服部は、ピクリとも表情を変えなかった。


「へぇ」


彼は興味なさげに短くそう言って、フイッと顔を正面へ向けてしまった。


……ま、そんなもんだよね、現実は。


何を期待してたんだあたしは。アホか。


でも、でも。

ちょっとくらい、何かしらの反応をくれたっていいじゃない。


「自分から訊いたくせに」


あたしも正面に向き直って、空の星を眺めるふりをして天を仰いだ。


そうしないと、気分がどこまでも沈んでいきそうだったからだ。


バカ。服部のバァーカ。


「もう寝る。おやすみ」


返事も待たずにあたしは服部の家に背を向け、ペタペタと音を立てながら、もと来た葉山くんの部屋を目指した。


部屋に入る前に、服部の家の方向へ顔を向ける。


そこにはまだ服部の姿があって、ジッとこっちを見つめているような気がした。

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