小さなキミと
─────
────
───
──



最近あたしは、なぜか服部に、地味に避けられていると感じるようになっていた。


勉強会2日目の日曜日、服部は葉山くんの家には来なかった。


そして月曜日、期末テストの為に席が出席番号順になった。


せっかく久々に席が近くなったのに、服部は不自然なくらいにあたしを相手にしなかった。


こっちから話しかけても、無視はしないものの、すぐにどこかへ逃げるようにいなくなるし。


ふと目が合っても、ものすごい速さで逸らされるのだ。


これにはさすがに傷ついた。


なんで?


あたしまた何かやらかしました?


まさか、あたしが好きな人いるって言ったのが原因じゃないよね?


もしそうだとしたら、服部はなかなか察しが鋭い上に、結構嫌なヤツだということになる。


が、服部に限ってそれはないだろう。


彼はどっちかというと鈍感だ。


訊きたいけど、怖くて訊けない。


7月頭から1週間にわたり実施された期末テストの間中、あたしはそんなことばかり考えていた。


ただし、テストの問題が思いのほか解けなかったのはそのせいではない。


自分が自分に甘かったせいである。




期末テストが終わって週が明け、今日で夏休みまで残り3週間を切った。


2時限目が終わり、今は休み時間で教室は賑わっていた。


次の3時限目は、最後のテストの答案用紙が返ってくるのだけど……


科目は“ライティング”、手ごたえはまるでなし。



「剛、最近元気なくね?」


イスに後ろ向きに座った八神が、俯いたあたしを覗き込むようにして話しかけてきた。


八神というのは、あたしの前の席の大柄な色黒男のことだ。


「そんなことないよ」


あたしは普通に笑って言ったつもりだったのに、なぜか八神は顔をしかめた。


「いや、絶対なんかあっただろ。教えろよ」


「何にもないってば」


これ以上突っ込まれるのはうっとうしいので、シッシと追い払う仕草を八神に向ける。


こればっかりは、男子に相談なんてできない。


「ふーん、まぁいいや。
そんなことよりライティング返ってきたら、ちゃんとテストの合計教えろよ」


あたしの気持ちを知ってか知らずか、八神はあっさりと話を変えた。

< 137 / 276 >

この作品をシェア

pagetop