小さなキミと
それにしても、二人乗りがこんなに距離が近いだなんて、知らなかった。


汗とか、シャンプーとか、柔軟剤とか。

彼の匂いがたくさん飛んで来て、どうも落ち着かない。


「つーか普通、自分とこの制服ぐらい、見たら分かんだろ。何だよ小学生って」


そんなあたしの気持ちは露知らず、呆れたように彼はそう言う。


「……えぇっ、っていうかキミも若南なの!?」


「反応おっそ。今、何時?」


あたしの驚きリアクションを軽くスルーした彼にムッとしつつも、手に持っていたケータイで時間を確認する。


「10時13分」


「マジ!? もう式始まってんじゃん。やべーッ」


ショックを受けた様子の彼に、今思いついた疑問を投げかけてみる。


「キミ、本当の本当に高校生? 飛び級とかしてて、実は10歳とか」


「んなわけねーだろ、アンタちょっと黙れッ」


怒られてしまった。

やっぱり彼があたしと同い年なのは確実のようだ。


そんなやり取りからややあって。

あたしたちの目的地、私立 若葉南(わかばみなみ)高等学校の大きな校舎が、前方左に姿を現した。


若南は周りが田んぼや畑に囲まれているので、遠くからでも確認できるのだ。


「あーっ、若南見えたよっ」


「分かってる」


あたしたちを乗せた赤い自転車は、左に曲がって桜通りを抜けた。

< 14 / 276 >

この作品をシェア

pagetop