小さなキミと
そんな中登場した第三者の男は、やはりオレをイラつかせてくれた。


勝手にオレの部屋のドアを開け、ニヤリと笑みを張り付けたそいつの名は服部 聡 (さとし)。


正真正銘、実の兄だ。


黒縁メガネに嫌味な高身長の20歳で、大学2年生。


つまり聡と同じく父親似だったなら、オレは身長がもう少し高くなったはずだった。


「いやぁ、今日の奏也はいつもに増してイラついてるよねぇ」


聡の声音は明らかに面白がっている。


ただの好奇心からやって来たということが丸わかりだった。


「そーなんだよ、聡くん。コイツ、ここんとこずーっとこんなんでさぁ」


「圭、黙れ。そんで聡はオレの部屋に来んな」


オレにすごまれた聡は、わざとっぽく身震いしてみせた。


「うーわ、奏也超ご機嫌斜めじゃん。何があった? 女絡み?」


「そ」

「違うッ」


叫ぶ勢いで否定し、オレは余計なことを言おうとした圭を睨みつける。


しかし、時すでに遅し。


「えっ、マジなの?
圭くん、ちょっと詳しく教えて」


何かを感じ取った聡はずかずかと部屋に上がり込み、瞳をギラギラさせながら圭に詰め寄った。


「ふざけんな出てけバカッ」


力ずくでどうにか聡を圭から引き離し、部屋の外へ蹴っ飛ばす。


「お前、兄ちゃんに暴力振るうなよ……」


ヨロヨロと立ち上がった聡は、腰を押さえながら廊下に消えた。


力勝負なら、オレは聡に余裕で勝てる。


アイツはひょろっと背が高いだけで、実はひ弱なんだ。


このケンカのようなやり取りは毎度の事なので、圭は特に驚いたりはせずに笑って聡を見送ったようだった。

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