小さなキミと
4畳半の狭い部屋に、2人分のスマホゲームの音が響く。


「なぁ奏也。お前さぁ、もうちょっと自分に正直になった方がいいと思うよ」


目は画面に釘付けにさせたまま、圭が何やら漠然とした話題を振った。


「何のことだよ」


オレの言葉を無視して、圭は続ける。


「お前がイラついてんのって、今日の昼休みからだろ?
いや、最近ずっと不機嫌だったけどさ。今日の昼からは特に酷いよ」


あぁ、そのことか……


オレは内心で舌打ちをしつつ答える。


「んなことねーよ」


「あるよ。あっ、死んだ」


圭のスマホから流れていた軽快な音楽が、ピタリと途切れた。


相変わらず、圭はゲームが弱い。


この間、剛もそんなことを言っていたなぁ、とオレはぼんやり思い出す。


今日の昼と言われて思い当たることは、どう考えても1つしかない。



昼休み、オレはいつものように、教室の後方に集まった男子たちと弁当を食べがてら談笑していた。


それで何となく向けた視線の先に居たのが、剛だ。


あのやたらデカい八神という男子と喋っているところだった。


あーまたアイツかよ最近仲いいよなあの2人。


とかそんなようなことを思いながらも目を逸らせずにいたら、唐突に、剛が八神を叩いた。


剛はほとんど背中しか見えない角度だったので、どんな表情かは知らない。


だけど八神の顔なら。


立ち上がった八神は嬉しそうに、くすぐったそうに笑っていて。


なぜか、その笑顔に危機感を覚えて。


直後、不意に八神は剛の頭に触れ……オレは思わず箸を取り落としそうになった。


その仕草があまりにも自然で、無性に悔しくて、腹が立った。


なぜこんなにも腹が立つのか、自分でも分からなかった。

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