小さなキミと
あれ、圭も見てたんだな。


そんでオレも見られてたんだ。


いつのまにやら、手にしたスマホ画面にはゲームオーバーの文字が並んでいた。


考え事に夢中でゲームをしていたことを忘れていた。


聡が去ってから普段の定位置であるベッドの上に戻っていたオレは、スマホの電源を落とし、圭に背を向けるように寝返りを打った。


ベッドは壁際に設置されているので、目の前には白い壁しか無くなった。


すると背後からベッドのきしむ乾いた音が聞こえ、同時にマットが沈む。


この感覚は、どうやら圭がベッドに上がって来たらしい。


「なーんか最近、奏也剛さんを避けてるよなぁ」


圭はのんびりとした調子でそう言ったけど、オレは責められているような気持ちになった。


「……別に」


「嘘つくなよー。
剛さん結構ヘコんでるよ。服部に嫌われたーつって」


ピ、ピ、ピ、という電子的な効果音が、圭の言葉に混ざる。


「だって……なんか、アイツ見るとさ。
なんかこう、なんつーか、モヤっとすんだよ」


オレがもごもご喋っている間に、軽快な音楽がまた流れ始めていた。


圭は懲りずにまた同じゲームを始めたらしい。


「……アイツ、この間のアレ覚えてねーんだってさ」


聞いているのか聞いていないのか。


圭の返事の代わりに、ピコピコと間抜けな効果音だけが背中から聞こえる。


「アイツ好きなヤツいるんだって」


オレがそう言ったと同時に、音は消えた。

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