小さなキミと





大きくて立派な校門の前で、これまた大きくて立派に肥えた50代ぐらいのおっさんが1人。

物凄い形相で、腕を組んで仁王立ちしている。


おそらく若南の教師だと思われるそのおっさんは、目の前のあたしたちを交互に鋭く睨み付け────いきなり怒鳴った。


「お前らアホかッ」


二人してビクッと肩を震わせる。


「入学式に遅刻した上堂々と二人乗り、しかもお前なんかネクタイしてねぇじゃねーかッ」


「す、すみません……」


あたしは俯(うつむ)いて、スカートをギュッと握りしめた。


横目でチラッと隣を見ると、小さな彼は、沈んだ表情でどこか一点を見つめていた。


もう少し早くあたしが自転車から降りていれば、こんなことにはならなかったのに。

と少し申し訳ない気持ちになった。


「組と名前」


酒の飲みすぎなのかガラガラの声で、ぶっきらぼうにおっさんは言った。


組と名前を言えってこと?


事前にクラス分けのプリントをもらっていたから、自分のクラスは把握している。


「……1組の、剛(ごう)です。剛 涼香」


あたしに続けて、彼が言う。


「1組、服部 奏也(はっとり そうや)」


へぇ、この子服部っていうんだ。

服部トム・ソーヤ……


っていうか、同じクラスかよ!

< 15 / 276 >

この作品をシェア

pagetop