小さなキミと
テスト期間中の、あたしに対する服部のあの態度は、一体なんだったんだろう。


今となっては、あのよそよそしさが懐かしい。


そういえば文化祭で行う劇、“白雪姫”で服部は強制的に小人役にされていた。


『似合わない』だとか『チビにぴったり』だとか言い合った記憶があるので、そのときには関係が既に元通りだったのだった。


服部がなぜあたしを避けていて、なぜ突然避けなくなったのか。


明確な理由は分からずじまいだけど、知らぬが仏と割り切った。


服部が喋ってくれるなら何でもいい。


このことに関して、結や葉山くんが裏で何やら暗躍していたらしいが、あたしの知ったことではない。


久々に服部から声がかかった時、飛び上がりたいくらいに嬉しかった。


先週あった出来事の中で、ぶっちぎりで“良いこと”だった。


ただ……先週は、良いこと以上に悪いことの方が多かった。


何もかも、有のせいだ。


そう、先週は正直服部どころではなかった。


移動教室、部活、行く先々で、いちいちヒソヒソやられて指をさされる羽目になり、精神的に参った。


有と一緒に居ようものなら、すかさずどこからか口笛が飛んでくる。


有がこの学校でどれほど有名なのかを思い知らされる、最悪な1週間だった。


あたしは見世物じゃないっつの。


アレですか、学校1のデカ女と学校1のデカ男が付き合ってたら、そんなに面白いですかっての。


いや付き合ってないけど!


名前で呼んでるだけであって、しかもこれはただの罰ゲームだから!


声で、心で何度抗議したことか。


八神有……


もしもこのままずーっと噂されるようなことになったら、一生かけて恨み倒してやるからな……



「涼香、顔が怖いよ」


日向にそう指摘され、あたしはハッと我に返った。


無言で正面の黒板を鋭く睨み付けていたことに、今の今まで気が付かなかったのだった。

< 153 / 276 >

この作品をシェア

pagetop