小さなキミと
「英Ⅰ……?」
あたしの呟きに答えるように、服部が口を開く。
「今日追試だろ、英Ⅰ」
「ハァッ!?」
あたしの発したそれは、ほとんど怒声に近かった。
絶望。その二文字が、頭を縦横無尽に飛び交う。
浮ついていた心に、一気に緊張が走る。
英Ⅰのテスト返しの際、教科担任は「今回は、赤点の子少ないんだよねぇ」と、期待させるようなことを言った。
少ないはずの赤点該当者に見事当てはまったアホなあたしは、完全に自業自得だった。
そして、その赤点科目の大事な大事な追試日を、すっかりポッカリ忘れていたのも自業自得。
「もっと早く……
さっきの自習ん時にでも教えてよ……」
八つ当たりのようなあたしの物言いに、さすがの服部もあたしが赤点だと察したようだ。
「教えるも何も、黒板にデッカく書いてあるし」
呆れ顔で指摘され、あたしは一度黒板に顔を向ける。
……確かに書いてある。赤と白のチョークで大きく、濃く、ハッキリと目立つように。
逆に目立ちすぎていて盲点だった。
「今回オレ剛の点数知らねーもん。つか、まさか赤点取ってるとは思わんだろ。
だってお前、あのデカ……八神と勝負してたんだろ? あの天才と」
八神というフレーズを聞いて、あたしは反射的に顔をしかめる。
「なんで知ってんのよ」
口に出した直後、バカなことを訊いてしまった自分を詰(なじ)った。
────八神くんと剛さんって、付き合ってるんじゃないの?
付き合ってない!
────じゃあ何で名前で呼んでるの?
期末の合計勝負して負けたから。ただの罰ゲーム!
そんな受け答えを、この教室内で何度繰り返しただろうか。
それが服部の耳に届いていたとしても不思議ではない。
あたしの呟きに答えるように、服部が口を開く。
「今日追試だろ、英Ⅰ」
「ハァッ!?」
あたしの発したそれは、ほとんど怒声に近かった。
絶望。その二文字が、頭を縦横無尽に飛び交う。
浮ついていた心に、一気に緊張が走る。
英Ⅰのテスト返しの際、教科担任は「今回は、赤点の子少ないんだよねぇ」と、期待させるようなことを言った。
少ないはずの赤点該当者に見事当てはまったアホなあたしは、完全に自業自得だった。
そして、その赤点科目の大事な大事な追試日を、すっかりポッカリ忘れていたのも自業自得。
「もっと早く……
さっきの自習ん時にでも教えてよ……」
八つ当たりのようなあたしの物言いに、さすがの服部もあたしが赤点だと察したようだ。
「教えるも何も、黒板にデッカく書いてあるし」
呆れ顔で指摘され、あたしは一度黒板に顔を向ける。
……確かに書いてある。赤と白のチョークで大きく、濃く、ハッキリと目立つように。
逆に目立ちすぎていて盲点だった。
「今回オレ剛の点数知らねーもん。つか、まさか赤点取ってるとは思わんだろ。
だってお前、あのデカ……八神と勝負してたんだろ? あの天才と」
八神というフレーズを聞いて、あたしは反射的に顔をしかめる。
「なんで知ってんのよ」
口に出した直後、バカなことを訊いてしまった自分を詰(なじ)った。
────八神くんと剛さんって、付き合ってるんじゃないの?
付き合ってない!
────じゃあ何で名前で呼んでるの?
期末の合計勝負して負けたから。ただの罰ゲーム!
そんな受け答えを、この教室内で何度繰り返しただろうか。
それが服部の耳に届いていたとしても不思議ではない。