小さなキミと
案の定、彼は痛いところを突かれたような顔になる。


さて一体どんな言い訳が飛び出てくるんでしょうか。


からかい半分、期待半分で待っていると、


「……お前どうせ範囲分かんねーだろ、教えるからノートと筆記用具持ってこれば」


どう聞いても言い訳にはなりえない言葉が返ってきた。


話の流れをガン無視とは、なかなかいい度胸……


苛立ちに理解が追いつき、あたしは目をパチクリさせた。


「え、それって」


「早くしろ、時間無くなるぞ」


服部がつっけんどんに声を重ねた。


どうやらそういうことだと受け取っていいらしい。


「わ、分かったっ」


慌てて自分の席に戻って、必要なものをカバンや机から取り出した。


ついでに前の席の有に断りを入れる。


「有、教科書やっぱいいや。
服部が見せてくれるんだってさ」


思わず声が弾む。


「……あぁ、そうなの」と有が呟くように言った。


「そうなのっ、
あ、何か色々ごめんね。吉岡とか」


視線を流すと、何やらうるさく騒ぐ吉岡たち男子が目に映った。


あたしや有に飽きたのか、あっという間に別の話題を見つけたようだった。


「いや別に、オレは全然気にしないし。まぁ元はと言えばオレが」


「そっか良かった、じゃあまた明日ねっ」


時間が無いので早々に切り上げる。


有は一瞬ムッとしたが、根は優しいヤツなので、笑顔で「またな」と手を振ってくれた。

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