小さなキミと
と、そのタイミングで剛が身体をこっちへ向けたので、内心ギクリとした。


まさか頭ん中覗かれた?
……いやいやそんなワケあるか。


「単位喪失って本当かなぁ。あたし中間は赤点じゃないけど、確かギリだったような気がするなぁ。
どうしよー、留年とか言われたら」


案の定全然違う話題、というより普通に話の流れに沿った話題で、オレは密かにホッとした。


大げさなほどに落ち込んだ剛の顔は、意気消沈ぶりをありありと表していて、
ちょっとだけ気の毒だった。


そして手に持った筆箱は、海外のお菓子のパッケージのような見た目をしていた。


いかにも甘党の剛らしい。


「なんとかなるだろ」


「んな無責任なー、ならなかったらどうすんのよ。
服部があたしの先輩になっちゃうんですけど」


「知らんわ、自分でなんとかしろ」


オレの頭は別の事でいっぱいで、返事がおざなりになっていた。



今日、なぁーーーー。


でもだって明日とか絶対無理だろ。


明日になったら『また明日』ってなるわ絶対、オレなら。


畜生さっきのアレのせいで究極に焦ってる。


部活は追試で遅れるって言ってあるから大丈夫、のはず。



「────、ねぇ聞いてる?」


怪訝な声に、ハッとする。


やべぇ聞いてなかった。


態度で分かったのか、「もー、聞けよ人の話」と剛が唇をとがらせる。


「いいけどね、別にただの愚痴ですから」


「あー、いや、ちょっと考え事してて」


取って付けたようにアハハと笑うオレに、剛はますます不機嫌面だ。

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