小さなキミと
ふと、剛があの菓子袋風の筆箱の中へと視線を止めた。
「あ」という呟き付きで。
目の前でそんなことをされたら、感心が向くのは人間の本能だ。
「なに」
「いやっ、別に大したことでは」
言いながら、剛は机のシャープペンシル等を急いでそれに突っ込む。
挙動が微妙に怪しい。
大したことないなら教えろよ。
「なんだよ」
「それより服部どうだったの追試、受かりそう?」
剛は明らかに逃げた。
きっと知られたくない何かが、あの菓子袋に入っているのだろう。
そんなふうに隠されると、逆に興味は増す一方なのに。
「当たり前。授業中めっちゃ頑張って追試の勉強しまくったからなー」
取りあえず答えてやると、剛はここぞとばかりに食いついた。
「うわそれ自慢になんないし、
っていうか頑張ってカンペ作ってた、の間違いじゃないの?」
いやいやちょっと待てその言い草はあんまりだ、人聞きの悪い。
少なくともオレが自習中に追試勉強していたことは、剛なら知っているはずだ。
つまりコイツは、オレを煽(あお)っているだけだった。
まんまと乗せられるオレも大概だが。
「ふざけんじゃねーよッ、んなこと誰がするかボケッ」
「冗談に決まってんじゃんボケッ」
オレにつられ、剛の言葉選びも荒くなる。
「冗談なら冗談っぽく言えよバーカ」
「アッ!」
剛が声を上げた頃には、“それ”はもう既にオレの手の中だった。
一瞬のスキをついて、例の菓子袋風ペンケースを奪うことに成功したのである。
「ちょっと返せッ」
すかさず伸びてきた、女にしては長めの腕をヒョイとかわす。
身長は負けるが、反射神経はオレのが上だった。
「あ」という呟き付きで。
目の前でそんなことをされたら、感心が向くのは人間の本能だ。
「なに」
「いやっ、別に大したことでは」
言いながら、剛は机のシャープペンシル等を急いでそれに突っ込む。
挙動が微妙に怪しい。
大したことないなら教えろよ。
「なんだよ」
「それより服部どうだったの追試、受かりそう?」
剛は明らかに逃げた。
きっと知られたくない何かが、あの菓子袋に入っているのだろう。
そんなふうに隠されると、逆に興味は増す一方なのに。
「当たり前。授業中めっちゃ頑張って追試の勉強しまくったからなー」
取りあえず答えてやると、剛はここぞとばかりに食いついた。
「うわそれ自慢になんないし、
っていうか頑張ってカンペ作ってた、の間違いじゃないの?」
いやいやちょっと待てその言い草はあんまりだ、人聞きの悪い。
少なくともオレが自習中に追試勉強していたことは、剛なら知っているはずだ。
つまりコイツは、オレを煽(あお)っているだけだった。
まんまと乗せられるオレも大概だが。
「ふざけんじゃねーよッ、んなこと誰がするかボケッ」
「冗談に決まってんじゃんボケッ」
オレにつられ、剛の言葉選びも荒くなる。
「冗談なら冗談っぽく言えよバーカ」
「アッ!」
剛が声を上げた頃には、“それ”はもう既にオレの手の中だった。
一瞬のスキをついて、例の菓子袋風ペンケースを奪うことに成功したのである。
「ちょっと返せッ」
すかさず伸びてきた、女にしては長めの腕をヒョイとかわす。
身長は負けるが、反射神経はオレのが上だった。