小さなキミと
あたしは目を閉じた。


この後どうなるのか、それが何を意味するのか、全部理解したうえで目を閉じた。


彼女になっていいなら、なんて。


そんな上から目線で物言えないよ、あたし。


だってあたし、ずっと前から服部の事が好きだったんだから────



人生で一番長く感じた数秒後、


あたしの唇に、ついばむような可愛いキスが落とされたのだった。







唇が離れた時に鳴った軽い音が、何だかものすごくヤラシイ音に聞こえた。


照れと戦いながらウロウロと視線をさまよわせ、そーっと相手の様子をうかがう。


バチッと目が合って思わず逸らしてしまった。



服部も照れてた。


あたしたち、もうオトモダチじゃないんだ。


あたし本当に、服部の彼女なんだ。


自覚した途端、体温が急激に上がったようだった。



「……レモンじゃねぇな、今日は」


と、静かな教室に服部のつぶやきが落とされた。


考えたが、あたしにはちょっと意味が分からない。


「なにそれ」


覚悟を決めて、再び服部の目を捉える。


逸らすなよー、あたし。


「前にお前に……キスされたときレモンの匂いした」


「ハァッ!? あんた何言ってんの!?」


気に入らないことに反射で噛みつく癖は、そう簡単には治らないらしい。

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