小さなキミと
「涼香、帰ろー。腹減った」


中学の教科書や買ったばかりの電子辞書をカバンに片づけていると、結があたしの席にやって来た。


パッツン前髪に、内巻きのショートボブ。それが結の定番ヘアスタイルだ。


結とは小学校からの付き合いで、一番の親友。


図らずも高校が一緒になったことに喜んでいたら、なんとクラスまで一緒だった。


結は小柄な方なので、あたしとは昔から20cmくらい身長差があるのだけれど、それは取るに足らないことだった。


「結、ごめん。あたし今日、お迎えなんですよねー」


あたしが言うと、結はわざとらしく落ち込んだ表情をした。


「そうだった。朝も車だったもんね、涼香」


「うん。チャリが修理から戻ってくるまではね」


あたしの両親は仕事で忙しいから、送迎は大学生の従姉(いとこ)、みっちゃんにお願いすることにしている。


あたしや弟の入学式も、両親共に欠席だった。


「そういえば、昨日事故ってチャリ壊れたって言ってたよね。小学生とぶつかったって」


「あ、違う違う。見た目はそうなんだけど、頭脳……っていうか本当は高校生らしくてー」


チラッと左を見やると、隣の席の男子生徒越しに、ちょうど今席を立った服部少年とバッチリ目が合った。


何の因果か知らないが、ヤツとは一つ席を挟んで隣同士なのだった。


服部は、おっかない顔であたしを睨んでいた。


なんだ、やんのかコラ。

あたしも負けじと睨み返す。

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