小さなキミと
服部は、あたしの反応にちょっとふてくされた様子だった。


「テスト勉強かなんかで、こないだ圭んち来ただろ?
そんときお前、薬のせいで寝ぼけてオレに襲いかかってきて」


「嘘!」


「嘘じゃねーよお前、人の唇無理やり奪っといて覚えてねーくせに」


ウッ、と言葉に詰まる。


服部の言う通り、その辺の記憶が全くないあたしはハッキリ否定することができない。


レモンの匂い……確かにあたしは柑橘系の匂い付きリップを持っているし、あの日塗っていた記憶ならある。


信ぴょう性は非常に高い。


葉山くんの家でやらかしたっていうのは、もしかしてコレの事……?


「ごめん、マジで本気でごめん、あたし最悪じゃん……服部嫌だったよね?」


はい嫌でした、と言われたら本気でヘコむくせに、うっかり訊いてしまった。


しかし服部は口をとがらせたまま、質問で返してきた。


「そんときオレの事どう思ってた?」


どう思ってたもなにも、あなた目当てに葉山くんの家に行きました、


なんて言ったら引かれるかなぁ。


という思案の後、自分は今服部の彼女なんだということを思い出した。

ここは正直に言った方がいいかもしれない。

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