小さなキミと
「……好きだったよ。ああもう好きでした!
服部に会いたくて葉山くんちに行ったの、悪いっ?」


開き直ってやった、どうだ文句あるかバカ!


と、視界が一瞬暗くなった。


唇が触れたのも、離れたのもあっという間。


理解した時にはもう、それは終わった後だった。


呆然と見上げたあたしに服部は、


「したくなったからした」と何も訊いてないのにそう言った。


やったことは大胆なくせに、そっぽを向いた服部の耳は真っ赤だ。


なに、なに、今の!

めちゃくちゃ可愛いんですけど!


って言ったら怒るかな。


「ごめんさっきのちょっと嘘。別に無理やり襲われたワケじゃないから。事故みたいなモン」


教えてくれた服部への返事は、ふいに飛び出た盛大なお腹の音になってしまった。


3時をとっくに過ぎているというのに、そういえばあたしたちは2人とも、昼食がまだだったのだ。


いつまでも笑い転げる服部を半ば引きずるようにして、あたしたちは教室を後にした。


服部との記念すべき初デートは、いつかのようにあの桜通りになったのだった。

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