小さなキミと
第2章

冷やかしの的

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剛との関係が決定的に変わったその日、結果としてオレは部活をサボることになった。


一応弁解しておくと、最初からサボる気でサボったわけではない。


気づいた時には、もうとっくに部活が終わった時間だったのだ。


部活のことなんて、完全に頭から吹っ飛んでいた。


それくらい、あの時のオレは舞い上がっていた。


まあ理由がどうであれサボったことには変わりがないので、


次の日の朝練で、先輩たちにどやされるのは当然の成り行きだった。



「おい服部! お前昨日、何で部活来なかったんだよ!」


ネットを準備中のオレを見つけるなり、大声でキャプテンの神田先輩が詰め寄って来た。


「本当にすみませんでしたっ」


勢いよく頭を下げたオレに、「理由!」と怒鳴った声が降って来た。


恐る恐る顔を上げ、「すっかり忘れてました」と白状する。


が、それで納得する神田先輩ではない。


顔立ちが成人並みに出来上がっているうえ、ゴツゴツ骨ばっている神田先輩は、


うっかり怒らせるとその辺の教師よりも迫力があった。


「嘘つけ! 追試だかなんだかで遅れるってちゃんと言付け頼むようなヤツが、それを忘れるワケねーだろ!」


「いやあの、追試の後に色々あってそれでちょっと……」


「色々って何だ!」


神田先輩の吠え声につられて、周りの2年の部員や後から来た3年部員までもが寄って来た。


「いや、別に人に言う程のことじゃ……」


長身自慢の巨大な2年3年の先輩たちに囲まれ、


部員の中でダントツにチビのオレは、それこそ身が縮む思いだった。

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