小さなキミと
「お前この期に及んで隠そうとすんじゃねーよ!」


神田先輩の怒鳴り声が耳に痛い。


クソ。余計なこと喋った。


だが、後悔してももう手遅れだった。


「確かに、色々っていうの何か引っかかるよな」


「部活より大事なことでもあったの?」


等々、他の先輩方までもが神田先輩に加勢したのだ。


さっき謝ったときは『いいよ、次から気を付けて』で終わったのに!


他の1年部員はというと、準備をしながら遠巻きにこっちの様子をうかがっていた。


嫌な汗が背中を伝う。


ただでさえ蒸し暑い2階のアリーナだというのに。


不穏な空気だというのはビシビシ伝わって来た。


男子バレー部は基本的にフレンドリーなのだが、こういうことはキッチリしている部活だった。


下手に嘘つくとヤバいかもな……


ものすごく不本意だけど、オレは正直に吐くよりほかなかった。


「……告白してました」


一斉に先輩たちの顔がキョトンとなった。


「……女にか?」と神田先輩。


どういう意味だと内心怒(いか)ったが、オレはやけくそに頷いた。


一瞬の沈黙ののち、その場は怒涛(どとう)のようにどよめいた。


オレの女嫌いは部内では既に周知の事実なので、先輩方はにわかに信じがたいようだ。


だけどすぐにそれが好奇心一色に変わった。


相手は誰だの、返事はどうだっただのと、興奮した様子で先輩たちは迫って来た。


この人たちは、この類の話が大好きなのだ。


こーなるから言いたくなかったんだよオレは!

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