小さなキミと
同じバレー部ということもあり、先輩たちが剛のことを知っているのは仕方がなかった。


「えっ! あの子どう見てもお前より背ぇ高いじゃん」


「つーか、あの子って会長の弟と付き合ってんじゃないの?」


気遣いというものを知らない巨人たちは、


名前を聞いた途端、オレが気にしていることを平気で突っ込んで来た。


「違います、それただの噂です。
どっちもずば抜けてデカいんで周りが面白がっただけです」


とりあえず否定するところだけ否定し、


「本当にすいませんでした、もうこんな事は二度と」と話を終わらせようとする。


が、神田先輩にガシッと肩を掴まれ身動きが取れなくなった。


「待て、まだ結果を訊いてない」


先輩の意地悪く笑った成人顔に、思わず背筋が凍った。


目の前で怒鳴られたばかりだったので、逆らうことなんて出来なかった。


何だかんだでキスしたことまで吐かされ、オレは朝からぐったりだった。







朝礼間近。


オレは教室に入るなり、自然と窓際のとある席へと目が行った────剛は既に来ていた。


女子バレー部は朝練が比較的早く終わるらしく、オレよりも先に教室にいることが多い。


アイツ、まーた八神と喋ってんなぁ。


談笑中の剛と八神は、何やら楽しげな様子だった。


席が前後なので仕方がないのは分かっている。


剛が八神に対して何とも思ってないことも知っている。


だけど八神の方は……。


そう考えるとやっぱり、その光景は面白くない。


スタスタと教室を横切り、オレは一直線にそいつらの席へ向かった。

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