小さなキミと





上の空だった。


朝礼の間中、ずっと。


担任の話も、全然頭に入って来なかった。


周りにつられて起立し、周りにつられて着席する。


それだけで精いっぱいだった。


『お前が彼女でも恥ずかしくないから』


脳内で何度もリピートされるその言葉に、また身体中の熱が上がる。


頭、撫でられちゃった。


うわあ今さら恥ずかしい!


服部に、こんな、女子扱いみたいなことされるといちいち恥ずかしい!


前に有にも似たようなことされた気がするけど、あれとはなんか全然違った。


やばい、爆発しそう。


っていうか結構大胆なんだな服部って……。


小っ恥ずかしいこと平気で言うし。


いや平気じゃないな、地味に照れてるの分かるもん。


あたしも言った方がいいのかな。


いやでも好きとは言った気がするし。


うおぉーーーー分からん!


彼氏なんて初めてだから分かんないよーーーー!



────気づいたら朝礼が終わっていた。



「涼香……おい涼香!」


大声で名前を呼ばれ、ハッとして意識を向けた先にいたのはやはり八神有だった。


あたしのことを涼香と呼ぶ男子なんて、1人しかいない。


というか、そこは有の席だ。


「あ……なに?」


未だにぼーっとした頭でそう訊くと、有はちょっと言いづらそうにしながら「あのさ、お前って……」と切り出した。が、


「涼香ーーーーッ!」


という結の興奮した叫びに、一瞬にしてかき消されることになった。

< 187 / 276 >

この作品をシェア

pagetop