小さなキミと
ものすごい勢いで迫って来た結は、息つく間もなく声を張り上げた。


「さっきの何、どういうこと!?」


「ちょっと結、声デカいって」


慌てて宥(なだ)めるものの、結の興奮は収まらない。


結の席は割と後方なので、先ほどの服部とのやり取りが目に入ったんだろう。


「だって! あんなの!」とそこまで言ってふと冷静になった結が声をひそめた。


「服部くんが涼香にあんな態度取るなんて、どう考えても不自然じゃん。
何かあったとしか考えられないんだけど?」


なぜか、微妙に言い方が刺々しい。


「あたしに隠し事なんて許さないからね!」


あ、なるほど。


結が不機嫌な理由は、そこだったらしい。


「いや、でもそんなこと言ったってさ……」


昨日の今日のことなので、ずっと隠していたように思われるのは癪(しゃく)だ。


しかし、改めて報告するのは結構勇気が必要だった。


あたしがどう切り出すか決めかねていた時、「鳴海さん、ちょっとちょっと」と女子の声が結を呼んだ。


声の主は、あたしの右隣の席の柴原 美希(しばはら みき)。


不思議そうな顔で寄って行った結に、耳元で柴原がコショコショと何かを囁いた。


も、もしかして柴原ちゃん、さっきの服部との会話聞いてたんじゃ……


予感は的中で、ニヤッと笑った結の表情がその答えだった。

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