小さなキミと
わざわざ有を絡めるあたり、吉岡たちはあたしを挑発しているのだ。

そのネタが一番効果的だということを知っているから。


「にしてもなーんで剛なんかが良いのかねぇー」


と取り巻きのツンツン頭。

彼はまだ許せたが、続く吉岡の発言は聞き捨てならないものだった。


「マニアにしか分かんない世界があるんじゃねーの?」


「黙れ吉岡ァ!」


あたしの怒鳴り声が教室に響く。


勢いよく立ち上がったせいで、危うく椅子をひっくり返すところだった。


なんせ一瞬服部の存在を忘れるほどにぶちギレたので、周りを気遣う余裕なんてなかったのだ。


何で吉岡にそこまで言われなくてはならないのか、全くもって理解不能だった。



最近、吉岡グループの一味たちは、あたしを怒らせることが趣味みたいになっているようで。

あたしが怒れば怒るほど、ヤツらは面白がって笑うのである。


ヤツらとの口喧嘩は、ただこっちが一方的に体力を消耗して疲れるだけ。

なのにあたしは、毎度懲りずに噛みついてしまうのだった。



すると今度は「おぉ?」と何かを期待するような声が上がった。


服部のお仲間たちは、面白ければ何でも良いらしい。


対する吉岡一味は待ってましたとケラケラ笑い、またあたしの神経を逆なでするような発言を繰り返す。


いちいち言い返さずにはいられないあたしも悪いのだろうか、いやそんなはずはない。


服部のお仲間にしたって、何だかんだでお調子者の集まりだ。


吠えるあたしを見て笑っているのだから。


さぞや見世物としては、クラスメイト達の目に滑稽(こっけい)に映ったことだろう。


知らぬ間に、あたしはクラス中の注目を集めていたのだった。

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