小さなキミと
「うっさいチビッ」


あたしは、力任せに机を叩いて立ち上がった。


「アンタなんか、あたしのチャリぶっ壊しといて、知らん顔で帰ったくせにッ」


「ハァ?」


あたしの発言でさらに怒った服部は、心底馬鹿にしたような口調で言った。


「オレのチャリで学校まで来たこと、忘れちゃった? でかい図体の割には、脳みそ空っぽなんじゃねぇの?」


な、何だとこの野郎!


「んなワケあるか、入学式が終わってからの話してんのッ」


罵(ののし)り合いがヒートアップしそうになったところへ、結が慌てて止めに入った。


「ちょ、ちょっと待って、ストップストップッ」


結に腕を引かれて、あたしは教室の外へ連れ出された。


さすが結、開きっぱなしだったあたしのスクールバッグも、ちゃっかり閉めて持ってきている。


「……ねぇ、チャリでぶつかったのって、あの子?」


結が服部に視線を向けたので、あたしは黙って頷いた。


教室の中では、未だ不機嫌そうな顔をした服部が、同じクラスの長身の男子と何やら喋っていた。


「確かにあの子、童顔で背もそんなに高くはないとは思うけどさぁ、いくらなんでも小学生には見えないっしょ」


呆れたように、結が言う。

あたしはスクールバッグを受け取って、ボソッと言い訳を呟いた。


「だって。うちの凛太朗よりチビだもん」

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