小さなキミと
怒りか照れか、夕日のせいかで赤くなった彼の顔があらわになる。


「バカにしてません! まーったくもってバカにしてません!」


と言いつつもニヤニヤしてしまうのは止められず、また服部はへそを曲げてしまった。


「服部、違うってば。
あたしたちって何か、行動が似てるなぁと思って」


ごめんね、と一応謝ったが、服部は既にふてくされモードに入ってしまったらしい。


何を言ってもダメだった。


あまりにも頑なだったので指向を変えて、「コラちび!」とか「ガキ!」とか言ってみた。


するといつものように、「おめーがデカすぎるんだよアホ!」と返ってきた。


言われた言葉は結構ヒドイが、愛情表現の裏返しとでも思えばどうってことない。


服部もそう思ってくれるだろう。


時々こういう掛け合いを交えつつも、あたしたちは桜通りまでの道のりを、いつもの倍の時間をかけて笑いながら歩いた。


赤面を夕日で誤魔化して、照れを憎まれ口で誤魔化して。


その先の道は、車の往来や道幅の関係上自転車に乗らざるを得なかったけど、

もう充分いろいろと話せたので満足だった。


小さなタバコ屋の角が、あたしと服部の帰路の分かれ道。


そこはあたしたちが初めて出会った場所だった。


分かれるのが名残惜しいとは思いつつ、お互いそれを直球で伝えるキャラではない。


「バイバイ、明日学校で!」


「じゃーな!」


せめて明るく挨拶して、それぞれの道へ自転車を走らせた。




その日、寝る段になってあたしがベッドの中で思い出したのは、やはり服部の事だった。


吉岡にビシッと注意してくれて助かったよ、と言ったあたしに服部がくれた言葉は忘れない。


『オレさ────お前が関わってたら、何にだって立ち向かえる気がするわ』

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