小さなキミと





過剰に楽しみにし過ぎるのも考え物だった。


昨夜あたしは、一体ベッドの上で何百回寝返りを打っただろうか。


服部からの『おやすみ』LINEの後、すぐに睡眠体勢に入ったというのに全然眠れず数時間。


翌朝、あたしはお決まりのように寝坊した。


集合時刻の10分後に起床するという暴挙────これには我ながら季節外れの鳥肌が立った。


しかも自力で起きたのではない。


『ハァッ!? 今起きたとかお前バカなの!?
いや知ってたけどお前バカなの!? いや知ってたけど!』


服部からの吠え電話で飛び起きたあたしは超特急で顔を洗って身支度を整え、荷づくり済みのリュックを引っ掴んで慌てて家を飛び出した。


こんなこともあろうかと、荷物や服を昨日のうちに決めておいたのは正解だったけど……。


当然、集合場所の駅には既に全員そろっていたようだった。


『圭と鳴海さんには取りあえず先行ってもらうから、急ぎ過ぎて信号無視とかすんなよ!
……お前ほんっとバカ!』


服部の気遣いにはもう頭が上がらない。


これだけ彼にバカバカと連呼されて、一ミリもイラッと来なかったのは初めてだった。


あたしは今日一日、忠実に彼に従うことを心に誓ったのだった。







自転車で15分ほど爆走し、目的の駅に何とか到着。


服部は、地下の改札口へ続く階段の前で待っていた。


……それはそれは恐ろしい形相で。

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