小さなキミと
「本当にすいませんでした大変ご迷惑おかけしましたーーーーっ!」


服部と合流するなり、ヒザにおでこがくっつく勢いであたしは頭を下げた。


大急ぎで来たので身体中は汗びっしょり、息も絶え絶え。


汗臭さを誤魔化すために、服部から少し距離を開けての謝罪だった。


……のに、服部の靴が遠慮なしに近づいてきたので慌てて後ずさる。


見ると服部の顔には、相も変わらず眉間のしわがクッキリと浮き出ていてちょっと怖い。


「ああああたし汗臭いから半径5メートル以内には」


服部が逃げ腰のあたしの腕を捕まえた。


「うるせぇバカさっさと行くぞ」


彼は自然に、本当にさり気なく腕からあたしのてのひらに持ち替えた。


────め、めちゃめちゃ普通に手ぇ繋ぎよったでコイツ……!


目が釘付けになっていたところをグイッと服部に引っ張られ、思わず前につんのめったけど気合で立て直した。


そのまま地下まで引っ張って行かれ、彼が改札に直行したのであたしは待ったをかけた。


「切符買わないと!」


面倒くさそうに振り返った服部が、2枚の切符を掲げて見せた。


「────あらもうご購入済みで。あたしの分まですいませんね」


「そこは後で払うとか言えよ」


「じゃ後で払う」


「……もういーよオレの奢りで」


アンタがそう言えって言ったくせに、とブーブー言うあたしに切符を押しつけ、服部は先に改札を抜けて行った。

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