小さなキミと
ライトグレーのインナー、アウターに羽織ったシャツは水色ボーダー柄の七分袖。


ボトムはネイビーの少しゆったりしたパンツで、こっちも丈は七分だ。


一言で言うなら、爽やか? それともマリン風?


服部のちゃんとした私服姿なんて初めて見るけど、意外と落ち着いてて普通にカッコイイ……。


と、満員電車の一歩手前くらいに混んだ車内で、

あたしは隣に立つ小さな彼の、想像以上に洗練されたファッションに心を奪われていた。


彼の手にはデニム生地のベースボールキャップ、足元は動きやすいように運動靴だ。


見かけだけじゃなく機能性も考えられたコーディネートだった。


対してあたしはというと、まず最初に帽子を忘れた。


一応用意はしてあったけど、朝のバタバタのせいでうっかり家に置いてきた。


この暴力的な日差しの下、帽子無しは命にかかわる。


もったいないけど、遊園地内のお店で買うことになるだろう。


そして肝心のファッションはイマイチ自信がない。


昨夜死ぬほど悩みまくって、結局動きやすさを重視することにしたのはいいけれど……。


上はゆったりめの柄Tシャツで、せめてものお洒落としてハイウェストのデニム短パンにTシャツをインしてみた。


でも何ていうか……手抜き感アリアリに見えない? 手抜きじゃないのに。


普通すぎたかな。一応気合入れすぎコーデにならないようにしたつもりだけど。


服部が予想外にオシャレだったので、あたしはちょっぴり気圧されていた。


あたしなんて初っ端から遅刻だし、汗ダラダラだし、髪型なんていつも以上に適当1つ結びだし最悪じゃん。


っていうか服部と直接会うこと自体久々なんだから、もっと完璧なコンディションでいたかったな。


すべては昨日の夜、目覚ましをセットし忘れた自分のせいだった。

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